バルビローリ&ハレ管によるチャイコフスキーの交響曲第4番を聴いて
バルビローリ&ハレ管によるチャイコフスキーの交響曲第4番(1957年録音)を聴いてみました。
バルビローリによるチャイコフスキーというと、あまりピンとこないかもしれません。しかしながら、一定量のセッション録音を遺してくれています。
例えば、交響曲では、この第4番と同時期の1950年代後半に、後期の3曲の交響曲をハレ管と録音してくれています。その他にも、このCDにカップリングされている≪ロメオとジュリエット≫や、≪フランチェスカ・ダ・リミニ≫、≪弦楽セレナード≫、≪スラヴ行進曲≫などのステレオ録音が残っている。SP期には、ハイフェッツとヴァイオリン協奏曲を録音してもいます。
そして、それらの多くは、とても素敵な演奏となっているのであります。
ということで、ここでの交響曲第4番を聴いて感じ取れたことについて、書いてゆきたいと思います。
概して、速めのテンポですっきりと進められてゆく。そのこともあって、キリッとした佇まいを示してくれている演奏となっています。端正で、凛としているチャイコフスキー演奏。
それでいて適度に激情的で熱い演奏。野太い音楽が鳴り響いています。更に言えば、充分にドラマティックで、ロマンティックでもある。これらのことは、多くのバルビローリの演奏に共通して当てはまるように思いますが、この演奏は、その特徴が良く出ていると言えましょう。そして、それがまた、チャイコフスキーの音楽に、誠に相応しい。
しかも、この演奏は、線がクッキリとしている。とても明瞭なのであります。それも、全く不自然な形ではなく。そう、息遣いが頗る自然。そのうえで、明晰にして明朗な音楽となっている。
毅然としていて、かつ、とても燃焼度が高い。メリハリを効かせながら、極めて克明に、キリッキリッと音楽は進められてゆく。それはもう、実に決然としている演奏ぶり。そんなこんなによって、音楽全体が存分にうねっていて、ドラマティックで、それでいて、美しい佇まいを湛えている音楽を、ここに聴くことができる。
音楽センスが抜群の演奏。
いやはや、なんとも素敵なチャイコフスキー演奏であります。