バレンボイム&ブーレーズによるバルトークのピアノ協奏曲を聴いて

バレンボイム&ブーレーズ&ニュー・フィルハーモニア管によるバルトークのピアノ協奏曲第1,3番(1967年録音)を聴いてみました。

1970年代を境にして、指揮活動の方に重点を移したバレンボイム(1942-)。その、若き時代の、ピアニストとしての演奏が、ここに刻まれています。
1970年前後に、イギリス室内管を弾き振りしてのモーツァルトのピアノ協奏曲全集を制作していますが、このバルトークは、ちょうどそれとオーバーラップする時期の録音となります。
ここで指揮をしているブーレーズとは、長年にわたって良好な関係を築いていたようでして、この録音から44年が経過した2011年には、このコンビによるリストのピアノ協奏曲がライヴ録音されています。また、ブーレーズが制作したマーラーの交響曲全集で、交響曲としては最後に録音された≪千人の交響曲≫ではシュターツカペレ・ベルリンが起用されているのも、この両名の親交が反映された結果なのかな、などと想像できます。

さて、ここでのバルトークの演奏について。
バルトークらしい、鮮烈で獰猛な演奏となっています。特に、ブーレーズによる音楽づくりは、実に先鋭的だと言えましょう。
その一方で、バレンボイムによるピアノは、激しさや鮮やかさを十分に備えているのですが、潤いのようなものが感じられます。テクニックの切れは充分で、力感に溢れている。それでいて、響きが暖かいのであります。鋭いのに、まろやか。
それでは、バレンボイムのピアノがブーレーズの指揮とぶつかっているかと言えば、さにあらず。逆に、バレンボイムのピアノが、ブーレーズの指揮を包み込んでいるかのよう。そのために、尖っている音楽でありつつも、抒情性を備えたバルトークになっている。芳醇なバルトークとも言えそう。
そのうえで、充分に凄絶でもある。

なかなかに興味深くて、かつ、素敵な演奏であります。