ブーレーズ&BBC響によるバルトークの≪弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽≫を聴いて
ブーレーズ&BBC響によるバルトークの≪弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽≫(1967年録音)を聴いてみました。
鋭角的であり、かつ、凄絶な演奏となっています。クールで、シリアスでもある。
ブーレーズは、1990年代に入った辺りから、角が取れてきて、丸みを帯びながら、暖かみの感じられる演奏を繰り広げるようになった(それは、「以前のブーレーズに比べると」といった注釈を付すべきなのでしょう)と見做していますが、ここでは、徹頭徹尾、シャープな演奏が繰り広げられています。
全編を通じて透徹し切った音楽が鳴り響いている。冷徹であるとも言えそう。曖昧なところがなく、頗るクリアであり、立体的だとも言いたい。しかも、峻厳であり、緊張感が高くもある。そのような演奏ぶりが、この作品に誠に似つかわしい。
更に言えば、音楽への切れ込む姿勢が、とても鋭くて深い。そんなこんなによって、作品の造形や、バルトークが描こうとしていたであろう音楽世界やが、クッキリとえぐり出しされてゆく。
そのうえで、クールで冷ややかでありながら、充分にホットでもあるのです。そう、この作品が備えている運動性や熱狂やが、しっかりと表されている。この作品は、良い意味で威圧的な側面があると言えましょうが、そのような性格も的確に表されている。そして、音楽が、至るところで「うねって」もいる。そういったことがまた、バルトークでの演奏に相応しいと言いたい。
全てにおいて、手際の鮮やかな演奏。しかも、そのような演奏ぶりを、作品の本質に迫ることにのみに貢献させようとしている、そんな意思が感じられる演奏となっている。
この作品の魅力を思う存分に味わうことのできる、なんとも見事な演奏であります。