ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管によるバッハの≪音楽の捧げもの≫を聴いて
ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管によるバッハの≪音楽の捧げもの≫(1976年録音)を聴いてみました。
キリッと引き締まった音楽が奏で上げられています。
ミュンヒンガーは、骨組みがガッシリとしていて、几帳面で、いかつい表情をした演奏を繰り広げてゆく、といった印象が強く、ここでの演奏も、そのような特色がよく現れているように思えます。そのうえで、揺るぎない安定感を示しながらの、キリッとした立ち姿が見えてくるようなバッハ演奏となっている。謹厳実直な演奏だとも言いたくなる。
とは言うものの、1950年代や60年代のミュンヒンガーの演奏に比べると、音楽づくりが丸くなっているようにも思えます。
(この辺りのことは、ミュンヒンガーによるヴィヴァルディの≪四季≫の新旧盤を聴き比べてみても、感じられます。)
基本的には堅固で四角張っているような体裁をしているのですが、それでも、随分と角が取れているように感じられるのです。堅牢な音楽づくりの中にも、ある種の流麗さが感じられてくる。そして、聴いていて変に身構えるようなことのない演奏となっている。更に言えば、厳格でありつつも、キビキビとした躍動感が備わっていて、音楽からは暖かみや親しみやすさが感じられる。
そう、凛としていて、玲瓏さの窺える演奏でありながら、決して冷ややかものになっていないのです。更に言えば、ほのかにロマンティックな表情が垣間見えたりもする。そして、その先からは、ミュンヒンガーのバッハへの限りない愛情が感じられてくる。
とても均整の取れた、そして、立派で魅力的なバッハ演奏。そんなふうに言いたくなる演奏であります。