ギレリス&メータ&ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴いて

ギレリス&メータ&ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(1979年ライヴ)を聴いてみました。

ギレリスの剛毅なピアノと、メータによる豪快な指揮とが相まって、実に感興豊かで、目くるめくような演奏が展開されています。
ギレリスは、いつもながらの「鋼鉄のタッチ」を繰り出しながら、粒立ちが鮮やかで、強靭な音楽を紡ぎ上げてゆく。しかも、脇目も振らず、邁進してゆくかのよう。それはもう、雄々しい弾きっぷりだと言えましょう。
テクニックもキレッキレ。とは言え、ただ単にテクニックを誇示するようなところは微塵に感じられず、スリリングでありつつも、ズシリとした手応えを持った演奏ぶりが示されています。
それでいて、第1楽章の第2主題などでは、抒情味に溢れていて、ロマンティックであり、頗る感傷的でもある。
一方のメータは、エネルギッシュかつドラマティックな演奏を繰り広げてくれています。随所で音楽を畳みかけていって、壮絶さが感じられもする。そのうえで、ゴージャスでグラマラスでもある。色彩感に溢れていて、輝かしくもある。
そのような両者によって、壮麗かつ爽快で、エキサイティングな音楽が生み出されています。懐の深さが感じられもする。そんなこんなによって、聴いていて興奮せずにはおれない演奏となっている。演奏が終わる前に会場内から大きな拍手が湧き起こっているのも、大いに頷けます。

なんとも胸のすく演奏となっています。そして、実にパワフルでもある。と言いつつも、ただ単に力で押しまくるだけの力強さではない。マスの力で聴き手をグイグイと引き込んでゆくような力強さの備わっている演奏だと言いたい。
いやはや、実に素晴らしい演奏であります。