ライスター&豊田耕児さん&群響によるモーツァルトのクラリネット協奏曲を聴いて

ライスター&豊田耕児&群響によるモーツァルトのクラリネット協奏曲(1980年録音)を聴いてみました。

ライスター(1937-)は、22歳でベルリン・フィルの首席奏者に就任してから1993年までその任にあり、オーボエのコッホ、フルートのブラウや一時期在籍していたゴールウェイ、ホルンのザイフェルトなどとともに、ベルリン・フィルの管楽器群の「顔」のような存在でありました。
その演奏の特徴は、卓越した技術と、まろやかな音色を土台にしながら、流麗に音楽を奏で上げるところにあると言えましょう。
ちなみに、1983年に立ち上げられたアンサンブル・ウィーン=ベルリンの初代メンバーでもありました。

さて、この演奏について。
いかにもライスターらしい、流暢な演奏となっています。
滑らかで、伸びやかで、快活な音楽が奏で上げられている。そして、技術も、語り口も、とても巧み。表現が細やかで、この曲が持っている明るさの中に同居する寂寥感のようなものもシッカリと感じられる。
流石だなと思わせるのは、基本的には速めのテンポでキビキビと進めていきながらも、時おり、ハッと立ち止まるかのようにテンポをガクッと落として、音楽に陰影を付けてゆくところ。千両役者の「芸」を見るかのようであります。とりわけ、第3楽章では、それが見事に決まっていました。
そんなライスターを支える豊田さんと群馬響によるバックアップぶりも素晴らしい。予想以上に低音を効かせた安定感のある充実した響きを伴った、清潔感漂う素敵な音楽が鳴り響いている。

魅力的で、かつ、立派な演奏であります。