カラヤン&フィルハーモニア管によるJ・シュトラウスⅡの≪こうもり≫全曲を聴いて

カラヤン&フィルハーモニア管によるJ・シュトラウスⅡの≪こうもり≫全曲(1955年録音)を聴いてみました。主な配役は、下記の通り。
アイゼンシュタイン:ニコライ・ゲッダ(T)
ロザリンデ:エリーザベト・シュワルツコップ(S)
アデーレ:リタ・シュトライヒ(S)
ファルケ:エーリヒ・クンツ(Br)
アルフレード:ヘルムート・ヘルプス(T)
フランク:カール・デンヒ(Br)

ロザリンデとアデーレに関して言えば、この音盤に優る歌唱はないのではないだろうか、と思っております。
シュワルツコップもシュトライヒも、実にコケティッシュで、洒落っ気たっぷり。そう、ここでのシュワルツコップは、風格豊かでありつつも、とても愛くるしくて、そのうえ、甘美なのであります。また、シュトライヒによるアデーレは、頗る軽妙なものとなっている。
しかも、2人ともに、匂い立つような気品がある。それでいて、決して居丈高ではなく、親しみ深い優雅さのようなものが感じられる。それはもう、何ともチャーミングな歌となっています。
録音当時47歳であったカラヤンの指揮は、覇気があって、颯爽としていて、明晰で、流麗で、音楽が弾けていて、これまた実に素晴らしい。
と言うものの、C・クライバーが示してくれていた動物的とも言えるような敏捷さや流動性や、極限的な地点にまで到達していると言えそうな昂揚感や焦燥感や官能性や、といったものは、ここでは望めません。やはり、カルロスは別格なのでありました。カルロスによる≪こうもり≫での音楽づくりは、スーパーエクセレントだと言えましょう。

とは言いながらやはり、素晴らしいカラヤンの指揮と、それを上回る素晴らしい歌を楽しむことのできる当盤の魅力は絶大であります。≪こうもり≫の魅力を存分に味わいながら、蠱惑的で、瀟洒な音楽に接することができる。そのうえで、何とも楽しくて、なおかつ、豊饒な音楽が奏で上げられているとも言いたい。
やはりこれは、頗る素敵な≪こうもり≫であります。