ドラティ&デトロイト響によるグローフェの≪グランド・キャニオン≫を聴いて
ドラティ&デトロイト響によるグローフェの≪グランド・キャニオン≫(1982年録音)を聴いてみました。
ドラティならではの、克明な演奏が繰り広げられています。
パキッとした演奏となっている。それだけに、音像のクリアな演奏だと言えましょう。視界良好な演奏だとも言いたくなる。
その一方で、音楽がベトつくようなことは微塵もないものの、この作品に込められている詩情性の豊かさも十分に描き出されている。色彩感にも不足はない。
全体的に、ドラマティックでありつつも、とてもスッキリとしてもいます。そして、1960年代辺りのドラティにしばしば感じられた強引さが無い。そう、十分にドラマティックでありつつも、決して力づくな演奏にはなっていないのです。むしろ、伸びやかで、しなやかな演奏となっている。そのうえで、広大な音楽世界の広がる演奏となってもいる。
そして、仕上げが丹念で、とても美しい。美麗な演奏だと言えましょう。
と言いつつも、この演奏にはやはり、ドラティ特有の線の明瞭さが備わっている。とても明快で、かつ鮮やかな音楽となっている。であるが故に、痛快でもある。と言いますか、爽快感を伴った≪グランド・キャニオン≫となっている。澄んだ空気が漂っている。
ドラティの卓越した手腕と、優れたバランス感覚とがクッキリと刻まれている演奏。
更に言えば、これは、ドラティの多くの演奏に当てはまることなのでしょうが、客観性の高い音楽が鳴り響いている。そんなこんなによって、ピュアな美しさが示されることとなっている。
なんとも見事な、そして、頗る魅力的な演奏であります。