イヴァン・フィッシャー&ブダペスト祝祭管によるリストの≪ファウスト交響曲≫を聴いて
イヴァン・フィッシャー&ブダペスト祝祭管によるリストの≪ファウスト交響曲≫(1996年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
I・フィッシャーは、私が厚い信頼を寄せている指揮者の一人。その、骨太で、生命力逞しい演奏ぶりによって、採り上げてゆく作品を生き生きと、そして雄渾に奏で上げてゆくところに惹かれるのであります。
ところで、I・フィッシャーによる同曲の実演は、2001年1月26日にコンセルトヘボウ管(RCO)との共演で接しております。
RCOとの演奏を聴いての印象を記しているノートが手許にあります。そこには、次のように書かれています。
(ちなみに、この日の演奏会では、前プロとしてハイドンの交響曲第102番が演奏され、休憩を挟んで≪ファウスト交響曲≫が演奏されています。)
「リストは、I・フィッシャー渾身の大熱演であった。とりわけ、第1楽章とフィナーレが素晴らしいの一言。
かなり速めのテンポを採っていたと思うが、そのことによる切迫感が、まず素晴らしい。その速いテンポの中で、更に煽るところは煽り、決めるところはキッチリと決め、とにかく音楽が生き生きと躍動している。傾向としてはムーティ盤を更にドラマティックにして(ムーティ盤も充分にドラマティックであったが、その上を行くほど)、かつ、明確なコントラストを付けた演奏と言えよう。しかも、ただ豪快に決めるだけでなく、ファウストの瞑想的な雰囲気や、メフィストフェレの不気味な素振りも、十二分に表現されている。
これまで、I・フィッシャーと言えばコダーイの作品集のCDしか聴いたことがなく、そこでも豪快で骨太な演奏をする指揮者という印象を受けていたが、実演は、その上を行くものであった。RCOという優れたオケを前にしての本日の演奏のため、殊のほか気合の入った演奏を繰り広げてくれたのかもしれない。」
さて、この1996年に手兵と録音した≪ファウスト交響曲≫もまた、2001年にRCOとの実演で聴いた印象と、非常に似通っています。
すなわち、豪快で骨太で、切迫感のある演奏となっている。キビキビとした運動性に満ちてもいる。そして、頗るドラマティックである。
しかも、瞑想的な雰囲気や、不気味な雰囲気にも不足がない。
そして、昂揚感が大きく、輝かしい演奏となっている。
I・フィッシャー、今一つ人気や認知度の低い指揮者であると言えるかもしれませんが、その音楽性の豊かさや、オケを統率する巧みさにおいては、現役指揮者の中でもトップクラスだと思っております。多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい指揮者であります。
<補足>
この音盤は、フィナーレの終結部が、オケのみの初稿版と、テノール独唱と合唱を伴った現行版の、2種類の演奏で収録されています。
これもまた、文献的に貴重であると言えましょう。