テンシュテット&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンの≪イタリア≫を聴いて
テンシュテット&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンの≪イタリア≫(1980年録音)を聴いてみました。
過度に陽気な雰囲気を醸し出すようなことのない、重厚で、ズシリとした手応えを持った演奏が展開されています。「これぞドイツ音楽」と言いたくなる。
とは言え、決して重苦しい演奏になっている訳ではありません。十分なる推進力を備えている。そして、熱気に溢れている。そう、テンシュテットならではのテンションの高さが示されていて、情熱的な演奏が繰り広げられている。上滑りするようなことは皆無でありつつ、音楽が渦を巻きながら突き進んで行くかのような力強さが感じられもする。
そのうえで、とてもロマンティックでもある。甘美に味わいに傾くようなことは殆どないものの、この演奏に籠められている感情の昂ぶりが、そのような印象を抱かせるのでありましょう。
このようなテンシュテットの音楽づくりに対して、ベルリン・フィルが、卓越した合奏力と、分厚い響きとで、がっしりとサポートをしてくれているところがまた、聞き物となっています。この演奏が持っている重厚感は、ベルリン・フィルに依るところが大きいと言えましょう。
そんなこんなによって、充実感たっぷりな演奏が繰り広げられている。
テンシュテット&ベルリン・フィルのコンビだからこそ為し得たと言えそうな、ユニークな魅力を湛えている≪イタリア≫であります。