ラトル&バーミンガム市響によるワイルの≪7つの大罪≫を聴いて
ラトル&バーミンガム市響によるワイルの≪7つの大罪≫(1982年録音)を聴いてみました。独唱陣は、エリーズ・ロス(ソプラノ)他。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
1980年に25歳でバーミンガム市響のシェフに就任したラトル。当盤は、そのポジションに就いて2年が経過した時点での録音となります。
さて、ここでの演奏はと言いますと、スタイリッシュに纏め上げられたものとなっています。
ワイルにありがちな、退廃した雰囲気は薄いように思える。と言いましょうか、スピード感があって、キビキビと進められていて、鋭敏な演奏となっています。更には、ピシッと背筋の伸びている演奏だとも言いたくなる。
それでいて、ワイルならではのオシャレな感覚に不足はありません。適度にスイングしていて、音楽が嬉々とした表情を浮かべている。ピシッとしていつつ、しなやかでもある。伸びやかでもある。
そのうえで、颯爽とした演奏となっている。生彩感に富んでもいる。目鼻立ちのクッキリとしていて、シャープな音楽づくりが為されている。それでいて、過度にエキセントリックになっている、という訳ではない。瑞々しい感性に裏付けられている演奏が繰り広げられています。そんなこんなは、20代の後半のラトルによる演奏でよく見受けられた特徴だと言えそうで、この時期のラトルの美質がクッキリと刻まれている演奏だと言いたくなります。
ロスによる歌唱もまた、過剰に艶美になったり、変に媚びるようであったり、といったことはありません。スッキリとしていて、ストレートな歌となっていて、ここでのラトルの演奏ぶりに相応しい。
とても見通しが良くて、率直であって、洗練味の感じられる演奏。
ユニークな魅力を湛えている、素敵なワイル演奏であります。