ヴァント&ベルリン・ドイツ響によるシューマンの交響曲第4番を聴いて

ヴァント&ベルリン・ドイツ響によるシューマンの交響曲第4番(1995年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ヴァントらしい、若々しくて覇気があり、躍動感に満ちた輝かしい演奏が繰り広げられています。
晩年のヴァントに対しては、風格が豊かで滋味深い演奏を聞かせる指揮者、といった評価が大勢を占めているように思いますが、私は、ヴァントの演奏の特徴は生き生きとした躍動感にあると考えています。とても元気のよい演奏をする指揮者であると。
とは言え、単に元気で溌溂としているだけではなく、腰の強さを感じさせてくれる指揮者であるとも思っています。
私のヴァント観に決定的な影響を与えたのが、2001年1月に実演で聴いたベルリン•フィルとのブルックナーの交響曲第8番でありました。このときが、私にとっては初めてのヴァントの実演体験。そこでの演奏は、ただ元気がいいだけ演奏ではなかった。コクも深くって、作品の内実をえぐり出すような音楽が鳴り響いていたのです。私にとってのヴァント開眼となった演奏会となりました。

そこへ行きますと、この音盤に収められているシューマンの演奏は、溌溂さが優っているように思えます。
推進力に満ちていて、輝かしくて晴れやかで、明朗な演奏が繰り広げられている。キビキビとしていて、律動感がとても高い。音楽が適度に熱狂していて、逞しい生命力を宿している。そのような要素が、この作品の性格にピッタリなのであります。しかも、とてもしなやかな演奏となっている。
全体的に、率直で屈託がなくて、ケレン味のない演奏が展開されている。しかも、響きは充実を極めている。
誠実な音楽づくりに支えられながら、充足感いっぱいな音楽が繰り広げられてゆく演奏。そのうえで、ライヴらしい感興の豊かさが鮮やかに反映されていて、昂揚感が高くもある。

ヴァントの美質がクッキリと現れている、素敵な演奏であると思います。