ショルティ&シカゴ響によるマーラーの≪大地の歌≫を聴いて
ショルティ&シカゴ響によるマーラーの≪大地の歌≫(1972年録音)を聴いてみました。
独唱は、コロ(T)とミントン(A)。
実に鮮烈な演奏であります。エッジが立っていて、克明で、明晰でもある。何から何までが、クリアな演奏だと言えましょう。まさに、目の覚めるような鮮やかさが広がっているとも言いたい。
アンサンブルは卓抜で、機能面での確かさにも目を見張らされます。
なるほど、余情の薄い演奏だと言えるかもしれません。寂寥感のようなものも小さい。しかしながら、そのようなものを補って余りある「明快な音楽に接することへの快感」が、ここにはあります。少なくとも、私にとっては。
同じようなことが、ショルティ&シカゴ響の多くの演奏にも言えるように思われますが、この演奏においては、上記のことがより一層強く感じられるのであります。それはもう、聴いていてスカッとした気分に浸ることができる音楽が、ここでは鳴り響いている。
そういったことは、この演奏が極めて鮮烈であるとともに、持った回ったところのないストレートな演奏ぶりが繰り広げられていることにも依るのではないでしょうか。そう、ここでは、実直で虚飾のない演奏が展開されている。そんなふうにも言いたい。
そのようなショルティの音楽づくりに対して、コロもミントンも、これまた明瞭で端然とした歌でもって応えてくれています。そして、2人ともに、声の美しさが抜群でもある。
更に言えば、コロのヘルデン・テノール(英雄的なテノール)としての輝かしさや伸びやかさには、聴いていて眩暈がしそうなくらいの圧倒感がある。
胸のすく快演。そのような表現がピッタリな演奏だと言えましょう。