ドホナーニ&ウィーン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第4番を聴いて
ドホナーニ&ウィーン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第4番(1988年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
鮮やかさと、柔らかさとを兼ね備えた演奏となっています。
エッジが効いていて、明快な演奏ぶりが示されています。それでいて、キレキレという訳でもない。むしろ、弾力性に富んでいて、丸みを帯びていると言いたい。それは、ウィーン・フィルが相手であるということもあるのでしょうが、ドホナーニの音楽性ゆえだという要素も強いのではないでしょうか。
まずもって、ウィーン・フィルの美音に耳が奪われる。いつもながらの、艶やかで、まろやかな音楽を奏で上げてくれています。身のこなしが、頗るしなやかでもある。そんなこんなによって、極めて美麗なチャイコフスキー演奏となっている。洗練された音楽でもある。
そのようなウィーン•フィルをドライブしながら、端正な演奏を展開してゆくドホナーニ。目鼻立ちがクッキリとしていて、折り目正しい演奏となっています。安定感も抜群。しかも、力感にも不足はなく、生き生きとした音楽が奏で上げられている。とは言いつつも、力で押し切るような素振りは皆無で、ゆとりをもって音楽を掻き鳴らしている。そのようなこともあって、音楽が示している佇まいが、とても美しくもある。
この当時のドホナーニは、手兵であったクリーヴランド管と組んでの録音では、硬質な手触りのする演奏を聞かせてくれることが多かったのですが、それに比べると、随分とまろやかな味わいを備えたものとなっているところが、とても興味深い。しかも、折り目正しくて、それでいて生気に溢れていて、かつ、堅固な構成力を備えた演奏となっているのが、いかにもドホナーニらしいところだと言いたい。
そのうえで、聴いていてウットリとしてくる演奏が繰り広げられている。コクが深くもある。
なんとも見事な、そして、素敵な演奏であります。