ムーティ&フィルハーモニア管によるシューマンの≪春≫を聴いて
ムーティ&フィルハーモニア管によるシューマンの≪春≫(1979年録音)を聴いてみました。
これは、ムーティが38歳の時の演奏。フィラデルフィア管の音楽監督に就任する前年の録音になります。それはまさに、破竹の勢いで進撃をしていたと言えそうな時期の記録、ということになりましょう。
その演奏ぶりはと言いますと、実に若々しくて、颯爽としていて、瑞々しいものとなっています。
キビキビとしていて、躍動感に満ちている。そして、実に明朗で、伸びやかで、晴れやか。表情が嬉々としていて、歓びに溢れていて、音楽が随所で弾んでいます。誠に意気軒昂な演奏だと言えましょう。そのような演奏ぶりが、≪春≫という題名を持つこの作品に、なんとも似つかわしい。
しかも、エネルギッシュで、ダイナミックな演奏が展開されている。厚ぼったい印象にはならない範囲でグラマラスであり、ゴージャスでもある。
更に言えば、情熱的で、推進力に溢れていて、歌心に満ちてもいる。緩徐楽章では、抒情性たっぷりで、情趣の深さを湛えた演奏が繰り広げられている。
そんなこんなの演奏ぶりが屈託なく示されていて、清々しい気分にさせられます。
若き日のムーティの魅力が、この作品の魅力に直結していると言えそうな演奏。
聴いていて幸福感を覚えてくる、なんとも素敵な演奏であります。