メータ&ロス・フィルによるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫を聴いて
メータ&ロス・フィルによるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫(1967年録音)を聴いてみました。
メータがロス・フィルの音楽監督の座に就いていたのは1962-78年でありますが、DECCAへの録音が開始されたのが、当盤の録音された1967年。これ以前では、1965年にRCAレーベルに録音したレスピーギの≪ローマの祭り≫とR・シュトラウスの≪ドン・ファン≫がカップリングされた1枚のみであったはずです。
すなわち、当盤では、このコンビのごく初期の演奏ぶりを確認することができる訳であります。
さて、その演奏はと言いますと、色彩感に溢れ、躍動感に満ちたものとなっています。音楽全体が、弾けている。そして、明快を極めている。とても鮮烈でもある。それはもう、聴いてきて快感を覚えるほどに。
必要以上グラマラスにならずに、程よく引き締まっていながらも(それは、3管編成にシェイプアップさせた1947年版を使用していることにも起因しているのでしょう)、充分に豊麗な演奏となっています。ダイナミックで、ゴージャスでもある。そして、なんとも華やかである。
そのうえで、しなやかで、伸びやかで、生き生きとした音楽が奏でられている。このときメータは31歳。実に若々しくて、瑞々しい演奏が繰り広げられています。
オーケストラ曲を聴く醍醐味を満喫できる演奏。しかも、難しいことをあれこれ考えることなく、ス~っと耳に入ってくる。そんなこんなが、誠に心地よい。
これらのことは、1960年代から70年代のメータの演奏の多くに当てはまることだと思うのですが、この≪ペトルーシュカ≫もまた然り。
メータ&ロス・フィルによるストラヴィンスキーと言えば、当盤の2年後に録音された≪春の祭典≫が、頗る評判が高いと言えましょう。また、≪ペトルーシュカ≫であれば、1979年にニューヨーク・フィルと録音した音盤のほうが、広く知られているように思えます。しかしながら、こちらの≪ペトルーシュカ≫の旧盤でも、このコンビの魅力が凝縮された、素晴らしい演奏を聴くことができます。
多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素敵な演奏であります。