プレヴィン&ロンドン響によるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫全曲を聴いて

プレヴィン&ロンドン響によるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫全曲(1976年録音)を聴いてみました。

私にとっての同曲のベストは、ウィーン・フィルの柔らかくて艶やかな美音が魅力のプレヴィン&ウィーン・フィル盤(1986年録音)なのですが、その10年前に録音された旧盤も、実に素敵な演奏であります。ウィーン・フィル盤での演奏以上に、プレヴィンの魅力的な音楽づくりを直截的に味わうことのできる演奏、と言えば良いでしょうか。
この演奏でも、プレヴィンらしい虚飾のない音楽づくりが繰り広げられています。誠にケレン味のない演奏が展開されている。そのうえで、親しみ深さや、色彩の鮮やかさが表されている。
この作品は、「妖精の音楽」だと呼べるように思うのですが、そのようなメルヘンチックな空気感や、軽やかさも充分。もっとも、夢の中に遊ぶかのような美しさは、ウィーン・フィルとの新盤のほうに分があるように思えます。その点、この旧盤は、夢想的な音楽というよりも、より現実的でクリアな音楽が鳴り響いていて、原色的な色彩感を帯びた音楽になっていると言えそう。目鼻立ちのクッキリとした演奏となってもいます。
更に言えば、溌剌とした演奏ぶりの中に、愉悦感や飛翔感がシッカリと表されているのが、この作品に接するうえで実に好ましい。プレヴィンの、ストーリーテラーとしての語り口の巧みさが現れてもいる。

作品の魅力を堪能することのできる演奏。しかも、プレヴィンの音楽への誠実さや、音楽センスの豊かさが遺憾なく表されている演奏。
なんとも魅力的な演奏であります。