シルヴェストリ&フランス国立放送管による≪新世界より≫を聴いて

シルヴェストリ&フランス国立放送管によるドヴォルザークの≪新世界より≫(1956録音)を聴いてみました。

シルヴェストリ(1913-1969)は、ルーマニア生まれの指揮者。爆演を展開することもしばしばで、個性的な演奏を繰り広げることが多く、ある種の「怪人」的な存在であるとも言えるように思えます。
なお、シルヴェストリは1964年にN響の指揮台にも立っているが、そこでの演奏会のうちの1つで、≪新世界より≫をメインに据えています。
さて、そのようなシルヴェストリによる、この音盤での≪新世界より≫でありますが。

全編を通じて、意欲的な表情付けがなされている演奏だと言えましょう。そのうえで、鮮烈で、力感に溢れていて、刺激的な演奏が繰り広げられている。
と言いつつも、両端楽章は比較的スッキリと仕上げられていると言えそう。その一方で、中間の2つの楽章は、粘り気を持たせていたり、リズムの処理に不規則性を持たせたり、といった按配で、かなり個性的な音楽づくりが為されています。とりわけ第2楽章での連綿たる歌いぶりには目を瞠るものがある。また、第3楽章も、主部では地響きを立てながら音楽が驀進させてゆき、中間部ではガラッと気分が変えて、ゆったりとしたテンポで濃厚な音楽世界が築き上げられている。やはり、一筋縄ではいかない指揮者であります。
また、両端楽章はスッキリしていると言いつつも、いずれの楽章も非常に推進力の強い音楽づくりとなっています。爆演とは言わないまでも、かなりアグレッシブな演奏ぶりだと言えましょう。時に金管楽器を咆哮させながら音楽を鋭く抉っていく様は、なんとも痛快であります。

かように、頗る個性的な演奏ではあり、ある種の芝居じみた雰囲気も持っているのですが、嫌味に聞こえないのが素晴らしいところ。独りよがりな音楽にもなっていない。それは、作品の持つ語法をシッカリとわきまえているからなのではないでしょうか。そのうえで、爽快感を覚える演奏となっている。

独特の魅力を持った、素敵な演奏であります。