マルティノン&フランス国立放送管によるドビュッシーの≪夜想曲≫を聴いて

マルティノン&フランス国立放送管によるドビュッシーの≪夜想曲≫(1973年録音)を聴いてみました。

マルティノン(1910-1976)は66歳で急逝していますが、1970年代に入って制作された、フランス国立放送管を指揮してのドビュッシーの管弦楽曲全集と、パリ管を指揮してのラヴェルの管弦楽曲全集は、彼の代表盤だと看做すことができましょう。この2つの全集は、今でも愛聴者が多いように思えます。
(もちろん、ここで触れたドビュッシーとラヴェルの全集以外にも、マルティノンは素晴らしい録音を数多く遺してくれています。例えば、プロコフィエフだったり、ボロディンやチャイコフスキーだったり。或いは、ベルリオーズやルーセルやサン=サーンスやフランクだったり、と。これら以外にも挙げたいものは山のようにあります。)
ここで採り上げます≪夜想曲≫は、そんなドビュッシー管弦楽曲全集の中に組み込まれている録音となります。

なんとも雰囲気豊かな演奏であります。
ドビュッシーならではの色彩感に溢れている。音楽の進行とともに、微妙に移ろう色合いの変化が、見事に描き出されている。
しかも、決してなよなよしている訳ではなく、克明で逞しい筆致をしている。力感に富んでいて、気宇は大きく、生命力に溢れている。
更に言えば、オーケストラの鳴りが良くて、豪快でもあります。この作品は、オケの鳴りを云々する必要は無いのかもしれませんが、とにかくオケの鳴りが良い。それがまた、純粋なる「快感」を喚び起こしてくれることとなってもいる。
それでいて、全く乱暴ではなく、繊細な音楽が鳴り響いているのであります。いや、知的であると言ったほうが良いかもしれません。そして、端整な音楽となっている。

総じて、暖色系のドビュッシー演奏。聴き手の心を温めてくれるような、いや、鼓舞してくれるようなドビュッシー演奏。そして、懐が深くて、味わいの深い演奏となっている。
見事な、そして、実に魅力的な演奏だと思います。