クレンペラー&フィルハーモニア管によるワイルの≪三文オペラ≫組曲を聴いて

クレンペラー&フィルハーモニア管によるワイルの三文オペラ組曲(1961年録音)を聴いてみました。
NML
(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

7つのナンバーをセレクトして組曲に編み上げたものとなっていて、≪小さな三文音楽≫というサブタイトルが与えられてもいます。
クレンペラー(1885-1973)は、晩年には謹厳な演奏ぶりを示すことが多かったと言えましょうが、若い頃はベルリンのクロル歌劇場の音楽監督を務めるなどして、革新的な演奏活動を行っていました。1950年頃までは、快速なテンポで押し通す「新即物主義的」な演奏を繰り広げることも多かった。
そのようなクレンペラーであるからこそ、≪三文オペラ≫の録音を遺していることには、違和感はありません。

さて、ここでの演奏内容はと言いますと、とても端正なものとなっています。この手の音楽にしては、厳格さの感じられる演奏ぶりであります。とは言いましても、決して堅苦しくはなっていない。むしろ、軽妙なものとなっている。
総じて、純音楽的なアプローチが為されていると言えましょう。それだけに、ワイルの持つ「毒気」のようなものが薄い音楽になっているとも思える。そう、格調の高い音楽が奏で上げられています。そのうえで、音楽からはふくよかさが感じられ、必要十分に弾んでいる。
しかも、カラッと晴れ渡った光景が広がるのではなく、この作品が持っている哀愁が漂ってくる音楽が鳴り響くこととなっている。

凛々しさの感じられる≪三文オペラ≫。そのうえで、聴いていてウキウキとしてくる。心が弾んでもくる。
ユニークな魅力を湛えている、素敵な演奏であります。