マタチッチ&チェコ・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第5番を聴いて

マタチッチ&チェコ・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第5番(1960年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

骨太でありつつ、洗練味も感じられる演奏となっています。
後半の「洗練味」という言葉は、マタチッチにはちょっと意外だと思われるのではないでしょうか。どちらかと言えば、馬力で押して、野性味のある演奏を繰り広げるイメージが先行してしまいますので。とは言え、同じくチェコ・フィルを指揮してのブルックナーの交響曲の幾つかでも、洗練された音楽づくりが為されているように感じられます。そうとは言いながらも、洗練味の度合いは、ブルックナーの時よりも、このチャイコフスキーでの方が強いように思える。
そのようなこともあって、かなり端正な演奏となってもいます。そこに、逞しさが加味されている。推進力が大きくて、エネルギッシュでもある。
そのうえで、晴れやかで瀟洒な雰囲気も併せ持っている演奏となっている。ある種、健康的な雰囲気があり、開放的でもあります。と言いつつも、アッケラカンとしているのではなく、シリアスな音楽が鳴り響いている。そして、誠実で真摯な音楽となっているのが、いかにもマタチッチらしいところ。晴れやかで開放的な点と、真摯さとのバランスが、なんとも絶妙であります。

マタチッチの意外な一面が垣間見える演奏。そのような演奏をチャイコフスキーで行っているところがまた、興味深い。
(もっとも、チャイコフスキーの作品は、ロシア音楽の中でも洗練味を帯びた要素が強いと言えそうですが。)
それでいて、マタチッチらしさもシッカリと刻印されている演奏となっている。
ユニークな魅力を湛えている、素敵な演奏であります。