シルヴェストリ&フィルハーモニア管によるヒンデミットの≪画家マティス≫を聴いて

シルヴェストリ&フィルハーモニア管によるヒンデミットの画家マティス1958年録音)を聴いてみました。
NML
(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

しばしば爆演を繰り広げてくれるシルヴェストリ。そのような際、音楽は、逞しくて土臭さを感じさせてくれるものとなっている。時おり(或いは、「頻繁に」と言えるかもしれません)、奇怪な表情を見せることもある。
その一方で、時によって、洗練された音楽を展開してくれることもあるシルヴェストリ。

そこへいきますと、この画家マティスは、その両面が備わっているように思えます。鮮烈でいて、端正な佇まいをした音楽が鳴り響いている。
ここでの演奏は、まずは、シルヴェストリならではの、力感豊かで推進力に富んだ音楽づくりを基調としていると言えましょう。誠に逞しくもあります。そこここで、音楽が「うねり」を見せている。
しかも、そこには、誇張は全く感じられない。奇怪な音楽にもなっていない。作品が備えているエネルギーを適切に解放したら、このような演奏になった。そんなふうに言えるように思えます。
そのうえで、瀟洒な音楽が奏で上げられている。頗る瑞々しくもある。最終曲などでは、構成感の確かさが滲み出ていて、充実度の高い音楽となっている。

知的でありつつ、血の気の多さが感じられる演奏。キリッとしていて、輪郭線がクッキリとしていて、ピュアな美しさを備えていて、しかも、生命力豊かな演奏。
シルヴェストリの幅の広さを感じさせてくれる演奏。そんなふうに言えそうな、素敵な演奏であります。