マルケヴィチ&ベルリン・フィルによるベルリオーズの≪イタリアのハロルド≫を聴いて

マルケヴィチ&ベルリン・フィルによるベルリオーズの≪イタリアのハロルド≫(1955年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

明晰で、巧緻な演奏が繰り広げられています。シャープでもある。そのため、目鼻立ちがクッキリとしていて、かつ、立体感のある演奏となっている。
それでいて、ストイックであり、ニヒルな表情をしている演奏だとも言えましょう。媚びを売るようなところが全く見られずに、毅然とした表情を湛えている。そのうえで、ドラマティックにして、生彩感に溢れていて、鮮烈で、生命力に溢れた演奏が展開されているのであります。そのような表情の奥には、必要十分なロマンティシズムが湛えられてもいる。
毅然としていて、ニヒルで、それでいて、色彩的であって、ロマンティック。このような性格はまさに、ベルリオーズの音楽に「うってつけ」だと言えましょう。
基本的には筋肉質だと言えそうなマルケヴィチの音楽づくりに対して、ベルリン・フィルがふくよかな肉感を与えてくれているところも、この演奏の大きな魅力となっています。このオケならではの、押し出しの強さがあり、かつ、豊麗でもある。どっしりとしていつつも、響きが艶やかで輝かしいことも、このような作品には好ましい。
(ちなみに、当盤は、フルトヴェングラーが亡くなった翌年の録音。フルトヴェングラーの影響を色濃く残しているベルリン・フィルによる演奏だと言うことができましょう。)

マルケヴィチ&ベルリン・フィルというコンビの妙が発揮されている、素敵な演奏。そのうえで、この作品の魅力が、クッキリと浮かび上がってくる演奏となっている。
あまり評判に上ってこない演奏だと言えるかもしれませんが、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素晴らしい演奏であります。