下鴨神社での「蹴鞠はじめ」観覧と、ベーム&ウィーン・フィルによるブルックナーの≪ロマンティック≫を聴いて
書初め、かるた始めなど、年が明けると、新春を祝う行事が目白押しですが、京都らしい伝統行事として、毎年1月4日に下鴨神社では「蹴鞠はじめ」が行われます。そこで、観に行ってきました。
色とりどりの装束を着て、男性は烏帽子をかぶり、風流に鞠を蹴る。麗しく蹴るのはとても難しく、かつ、ハードな球技とのことですが、観ていると華やいだ気分になってきました。
さて、本日採り上げます音盤は、ベーム&ウィーン・フィルによるブルックナーの≪ロマンティック≫(1973年録音)であります。
ベームのやや無骨な音楽づくりと、それを包み込む柔らかくて艶やかなウィーン・フィルの美音。結果として奏で上げられている音楽は、まろやかでありながら、構築力に秀でたものとなっています。鈍重になるようなことはないものの、どっしりとした安定感が備わってもいる。
全体的に、風格豊かな演奏だと言えましょう。雄大な音楽世界が広がっている。
その一方で、十分なる逞しさが宿っている。これ見よがしなところが全くなく、華美になるようなこともない中で、生命力が豊かな音楽が鳴り響いています。壮麗さを備えた音楽となってもいる。そのような演奏ぶりが、ブルックナーの作品に相応しい。
そのうえで、ベームならではの堅実さを秘めていつつも、この作品が湛えているロマンティックな雰囲気や流麗さにも不足はありません。そのために、耳への「心地よさ」が備わってもいる。そこには、ウィーン・フィルによる貢献も大いにあると言えそう。
そんなこんなに加えて、コクの深さが感じられる演奏となっている。
なんとも立派な、そして、感覚的な魅力もタップリと備えている演奏。しかも、外観の美しさのみならず、しっかりとした質感を持った美しさを宿している演奏になっていると言いたい。
多彩な魅力を備えている、なんとも素敵な演奏であります。