セル&クリーヴランド管によるモーツァルトの≪ジュピター≫を聴いて

セル&クリーヴランド管によるモーツァルトの≪ジュピター≫(1963年録音)を聴いてみました。

このコンビならではの、キリッと引き締まっていて、凛々しい演奏が繰り広げられています。
誠に端正な演奏。そして、精緻な音楽づくりがなされていて、作品のテクスチャーがクッキリと浮かび上がってくるような演奏となっている。
とても整然としていて、ちょっと冷めたような感覚が漂ってくる演奏だと言えるかもしれません。しかしながら、よくよく耳を澄ませば、ロマンティックな色合いも聞こえてくる。スリムで筋肉質な音楽のそのベースには、ふくよかさが潜んであるとも言えそう。更には、人肌の暖かさが感じられもする。

そして、キビキビとした運動性にも、全く不足はない。実に小気味よくもある。ちょっぴりニヒルな顔つきをしていると言えそうですが、生き生きとした表情を湛えた演奏となっています。この作品に相応しい壮麗さにも不足はない。とりわけ最終楽章は、躍動感に溢れていて、かつ、スケールの大きな演奏が展開されている。
そんなこんなによって、純音楽的な美しさに満ちていて、しかも、気持ちの華やぐ音楽が鳴り響くこととなっています。

「大人のモーツァルト」と表現できそうですが、そうであるとともに、とても高貴なモーツァルト演奏であると思います。