ドホナーニ&クリーヴランド管によるマーラーの≪悲劇的≫を聴いて

ドホナーニ&クリーヴランド管によるマーラーの≪悲劇的≫(1991年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

巧緻であり、かつ、生命力に溢れた演奏であります。
スッキリまとまっていて、全体的に硬質な肌合いをしていると言えそう。奏で上げられている音楽が、キリっとした表情をしている。それでいて、充分に柔軟性を帯びていて、しなやかでもあります。この辺りの音楽づくりは、ドホナーニの真骨頂であると言えましょう。更に言えば、そのような演奏スタイルが、このマーラーの長大な交響曲(演奏時間は約80分間)を、見通しの良いものにしている。
そして、聴かせ上手でもある。音楽の在り方におけるツボの押さえ具合が絶妙だと思えるのであります。やるべきことを、シッカリとやり尽くしている。丹念に、そして、誠実に。仕上がりが頗る丹精でもある。
そんなこんなのうえで、豊かな命を吹き込んでいる演奏になっている。整然としていつつも、運動性に満ちていて、頑健な演奏が繰り広げられているのであります。隈取りの鮮やかさな演奏ぶりが、生彩さを生むこととなっている。そして、凛然とした美しさを湛えている。潔さや、精悍さが感じられもする。
そのようなドホナーニの音楽づくりに対して、クリーヴランド管がまた、精緻な合奏で見事に応えてくれています。演奏全体が、引き締まっていて、凛々しいものとなっている。そして、不純物を含まないクリアな響きで、作品を満たしてくれている。

ドロドロしたところのない、明晰なマーラー演奏。ピュアな美しさに満ちているマーラー演奏。そのうえで、力感にも不足がなく、バイタリティーに溢れているマーラー演奏。
ドホナーニ&クリーヴランド管のコンビならではの魅力に満ちている、素敵なマーラー演奏であります。