ハスキル&アンセルメ&スイス・ロマンド管によるシューマンのピアノ協奏曲を聴いて

ハスキル&アンセルメ&スイス・ロマンド管によるシューマンのピアノ協奏曲(1956年ライヴ)を聴いてみました。

優美であるとともに、凛々しい演奏であります。指揮者がアンセルメであるだけに、よけいに凛々しさが増しているように思える。
そのうえで、シューマン特有の「狂気」や「妖気」のようなものは薄い。ここでの演奏は、もっと端正なものとなっています。そして、気品が漂っている。
と言いつつも、躍動感がある。熱気にも不足はない。音楽は十分にうねっていて、しっかりとした推進力が備わっている。ただ、燃えに燃えている、といった感じにはなっていません。ここにあるのは、理性を伴った燃焼と言えそうなもの。
更に言えば、目鼻立ちがクッキリとしていて、明瞭な音楽となっている。そして、響きは珠のように美しい。

アンセルメ&スイス・ロマンド管による演奏ぶりは、ドイツ音楽としての違和感はほとんどない(オーボエの音の、「チャルメラ風」な響きに違和感がある程度)、立派なバックアップぶりであります。そのうえで、ハスキルのために、ピュアなキャンバスを準備してくれている、と言えそうなサポートぶりとなっている。

ハスキルの魅力をタップリと味わいながら、シューマンのピアノ協奏曲に接することのできる演奏。
とても素敵な演奏であると思います。

そして、驚かされるのが、録音状態の良さ。モノラルによるライヴ録音ですが、音が団子状になったりせずに、クリアな音質で、細かなニュアンスまではっきりと聴きとることができます。粒立ちが鮮やかさでもある。とりわけ、ピアノ音は、とても鮮明。
(オーケストラの音は、ステレオ録音と比べると、多少なりともモゴモゴ感はありますが、それでも、鑑賞には全く支障はなく、立派な音質だと言えそう。)