セル&シュターツカペレ・ドレスデンによるブルックナーの交響曲第3番を聴いて
セル&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるブルックナーの交響曲第3番(1965年 ザルツブルク音楽祭ライヴ)を聴いてみました。
なんとも端正な演奏であります。
キリリと引き締まった造型。決して重量級ではないのですが、淡白さは全く感じられず、むしろ内容のギッシリ詰まった演奏となっています。凛としていつつ、力感に溢れている。響きは、充実感に満ちている。分厚さが感じられる演奏ぶりではないものの、音楽の構造から「重層的」な厚みを感じ取ることができる。その辺りが、いかにもブルックナーの音楽に相応しい。
そのうえで、ピュアな美しさに満ちています。キリっとした表情を湛えていて決然としている、ここでの演奏。その演奏が示している佇まいの美しさは、格別なものだと言えましょう。
しかも、ライヴならではの熱気に包まれています。しなやかさが備わってもいる。緩徐楽章では、過剰にならない範囲でロマンティックな感興が示されている。スケルツォでは、律動感に満ちている。また、最終楽章の最後の場面などは、誠に壮麗な音楽が響き渡っている。
そこへ持ってきて、SKDの清潔感のある美音がまた、頗る魅力的であります。その質感は、セルの音楽づくりにピッタリだと言いたい。
セルとSKDによる貴重な記録。ここには、両者の美質がギッシリと詰まっています。しかも、そのような希少価値に留まらない、実に立派で、聴き応え十分な演奏が展開されている。
更に言えば、セルによるブルックナーを聴いていると、この作曲家の新たな魅力に立ち会えているように思えてきます。そう、キリっとしていて、端正で理知的なブルックナーに出会うことのできる演奏となっている。
(似たようなことが、セルのマーラー演奏にも当てはまりましょう。セルによるマーラーの交響曲第6番もまた、ユニークでありつつ、破格の魅力を備えている演奏だと思っています。)
いやはや、なんとも素敵なブルックナー演奏であります。