ロト&レ・シエクルによるサン=サーンスの≪オルガン付き≫を聴いて

ロト&レ・シエクルによるサン=サーンスの≪オルガン付き≫(2010年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

清新な演奏が繰り広げられています。
キリっと引き締まった演奏が展開されていて、音楽が肥大化するようなことはない。厚化粧が施されるようなこともない。粘り気を伴うようなこともない。清潔感に満ちていて、かつ、音像のクリアな音楽が奏で上げられてゆく。音の粒がクッキリとしてもいる。
なんともピュアな演奏ぶりが示されています。爽快感に溢れてもいる。
そのうえで、敏捷性の高い演奏となっています。躍動感を誇張するようなことは無いのですが、十分に機敏な演奏となっている。そう、キビキビとした音楽が奏で上げられているのです(この点については、第3楽章において、とりわけ顕著)。鋭敏な演奏ぶりだと表現するほうが、より相応しいかもしれません。

なるほど、スケールの大きさや、ダイナミックな感興や、といったものを望むと、肩透かしを喰うかもしれません。この作品では、そのような性質の演奏を期待しがちでもありましょう。
或いは、ロマンティシズムも薄いと言えましょう。
しかしながら、この作品に清涼感を求めるとするならば、この演奏は恰好なものだと思えます。
しかも、スッキリとしていつつも薄味ではない。全体的に、精彩感のある演奏になっていると言いたい。クライマックスでの昂揚感も、必要十分に設定されていると言えましょう。
ユニークな魅力を湛えている、素敵な≪オルガン付き≫であります。