シャイー&クリーヴランド管によるチャイコフスキーの≪ロメオとジュリエット≫と≪フランチェスカ・ダ・リミニ≫を聴いて

シャイー&クリーヴランド管によるチャイコフスキーの≪ロメオとジュリエット≫と≪フランチェスカ・ダ・リミニ≫(1984年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

なんとも鮮烈で、かつ、明快な演奏となっています。
エッジが立っていて、キレッキレな演奏。そのうえで、誠に鋭敏で、躍動感やスピード感に満ちている。そして、頗るドラマティックでもある。これらの点については、≪フランチェスカ・ダ・リミニ≫での演奏において、殊更に顕著であります。
その一方で、豊満な演奏にはなっていたり、開放的な演奏になっていたり、といったことはありません。キリっと引き締まった音楽が鳴り響いている。そして、凝縮度の高い演奏が繰り広げられている。更に言えば、透明感を持ってもいる。この辺りは、クリーヴランド管の体質に依るところが大きいのではないでしょうか。
そのこととも関連しましょうが、磨き上げの丁寧な演奏となっている。そのために、音楽全体から洗練味が感じられる。なるほど、豪快で激情的な演奏なのですが、荒々しい音楽になってはいない。何と言いましょうか、細部までシッカリとコントロールされていて、精細な演奏となっているのであります。それ故に、凛然とした佇まいが示されている。
しかも、ロマンティックな感興にも全く不足がありません。一気呵成に音楽を進めつつ、歌うべきところではシッカリと歌い抜く。そのうえで、陶然とした音楽世界を築き上げている。また、≪ロメオとジュリエット≫の冒頭部分などは、清冽とした美しさを湛えてもいて、その分、頗る振幅の大きな演奏となってもいる。

生彩感に溢れていて、かつ、美感に溢れている演奏。
実に見事な、そして、頗る魅力的な演奏であります。