庄司紗矢香さん&メータ&イスラエル・フィルによるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番 他 を聴いて

庄司紗矢香さんのデビュー盤(2000年録音)を聴いてみました。
収録されているのは、下記の4曲。
①パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番
②ショーソン ≪詩曲≫
③ワックスマン ≪カルメン幻想曲≫
④ミルシテイン ≪パガニーニアーナ≫
①~③はメータ&イスラエル・フィルとの共演。④は無伴奏ヴァイオリンのための変奏曲。
図書館で借りたCDでの鑑賞になります。

庄司さんは1999年のパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールにおいて、史上最年少の16歳で、かつ、日本人として初の優勝を飾っており、その翌年に録音されたものとなっています。
ちなみに、同コンクールの主な優勝者として、アッカルド、カントロフ、クレーメル、カヴァコス、イザベル・ファウストといった名前を見出すことができます。

さて、ここでの庄司さんの演奏はと言えば、清冽なものとなっています。端正な佇まいをしていて、清潔感に溢れている。とても几帳面な演奏ぶりでもある。それは例えば、パガニーニの協奏曲や、≪カルメン幻想曲≫といった、煽情的な性格を持っている作品においても然り。そのために、この2作が備えていると言えそうな狂気めいた性格は、随分と薄い。パガニーニにおいては、イタリアの青い青空が広がっているような明朗な空気感も、前面に押し出されたものとはなっていない。
その一方で、音の粒がクッキリとしていて、キリっとした音楽づくりから、楚々とした美しさが滲み出ている。響きも十分に艶やか。そのうえで、テクニックも堅実で、安定感のある音楽が奏で上げられている。しかも、そのテクニックの確かさも、これ見よがしに見せつけるようなものではなく、或いは、キレッキレと言えるようなものでもなく、慎ましさの中から滲み出てくる正確さ、といった感じ。
そのような中で、≪詩曲≫においては、抒情性の豊かさの中に、伸びやかさや、ふくよかさが表されていて、惹きつけられるものがありました。
最後に収められている、20世紀を代表するヴァイオリニストの一人でありますミルシテインが書いた≪パガニーニアーナ≫は、パガニーニの≪24のカプリース≫の第1曲目(ラフマニノフの≪パガニーニの主題による狂詩曲≫で、テーマとなっている旋律)を中心に作られています。ここでは、庄司さんの確かなテクニックと、清々しい音楽づくりとが凝縮された演奏が繰り広げられている。
メータによる指揮からは、どっしりと構えて、庄司さんを万全にサポートしようといった意志が明確に伝わってくるよう。或いは、庄司さんをフォローするような演奏ぶりであるとも言えそう。パガニーニでは、キビキビとした音楽が奏で上げられていて、庄司さんのヴァイオリンからはあまり感じられなかった「イタリアの空気」がシッカリと伝わってくる。また、≪カルメン幻想曲≫でも、華麗で躍動感に満ちていて、音楽を存分に盛り上げてくれている。

「庄司紗矢香」というヴァイオリニストの原点が刻まれていて、かつ、彼女の個性がクッキリと刻まれている音盤。そんなふうに言えるように思えます。