シューベルトの誕生日に、ヨッフム&バイエルン放送響による≪ザ・グレート≫を聴いて

今日は、シューベルトの誕生日。この日には、極力、≪ザ・グレート≫を聴くようにしています。
ということで、今年は、ヨッフム&バイエルン放送響による演奏(1958年録音)で聴いてみました。

質実剛健で、かつ、充実感に満ちた演奏となっています。そのうえで、暖かみに溢れてもいる。
どこにもハッタリのない、誠実な演奏ぶりだと言えましょう。終始、どっしりと構えた音楽づくりが為されている。それでいて、重々しくなり過ぎたり、堅苦しさが感じられたり、といったことは微塵もない。息遣いの自然な演奏が繰り広げられている。
そのうえで、この作品に必要なスケールの大きさであったり、壮麗な音楽世界であったり、シューベルトならでは歌謡性の豊かさであったり、といったものが過不足なく表されている。
冒頭の序奏部はやや遅めのテンポが採られていて、荘重な雰囲気を持って開始される。しかしながら、主部に入るとシッカリとした律動感を伴った音楽が鳴り響いてゆく。壮麗でありつつも、伸びやかで、晴れやかな音楽になってもいる。コーダでは、力感に溢れていて、かつ、荘重で輝かしい音楽が奏で上げられる。
第2楽章は、実直さに裏付けられた歌心、と形容したくなるようなものに溢れています。であるからこそ、伸びやかで、かつ、滋味豊かで、暖かみを帯びた音楽が鳴り響いている。
後半の2つの楽章においても、これまでに述べてきたことが、そのまま当てはまりましょう。力感に溢れていて、かつ、息遣いの自然な演奏が展開されています。そのうえで、第3楽章では、ことさらに、明朗な雰囲気が横溢している。トリオ部では、豊かな歌心が感じられる。最終楽章は、特別に速いテンポが採られているという訳ではないのですが、推進力の大きな演奏が繰り広げられている。そしてその先に、壮麗にして輝かしいクライマックスが築かれることとなる。
かように、必要なことをキッチリとやり抜いている、という充足感に溢れた演奏が展開されており、それ故に、誇張のない形で、この作品の魅力が十全に語り尽くされている、といった感が強い。

ヨッフムの美質と、この作品の魅力の双方を堪能することのできる、なんとも素敵な演奏であります。