ブリュッヘン&18世紀管によるモーツァルトの≪プラハ≫を聴いて
ブリュッヘン&18世紀管によるモーツァルトの≪プラハ≫(1988年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
ブリュッヘンらしい、清新にして、溌溂とした演奏が繰り広げられています。
と言いつつも、音楽が弾けている、といった感じではありません。それよりももっと、しっとりとした音楽が鳴り響いている。
なるほど、両端の急速楽章はキビキビと推し進められています。スピード感も充分。それでいて、はしゃぎ回っているといった趣きはない。まろやかさを伴った音楽が鳴り響いている。
それにも増して、真ん中の緩徐楽章では、抒情性豊かで、端然とした音楽が鳴り響いています。柔らかみを帯びてもいる。
古楽器による演奏は、得てして、直線的な傾向を示すことが多いように思えるのですが、この演奏で示されているまろやかさは、出色ものだと言えましょう。そうであるが故に、明朗で、颯爽とした演奏ぶりでありつつも、コクのある演奏となっている。清々しくて、素朴で、天真爛漫でありながらも、暖かみがあって、奥行き感を備えた演奏だとも言いたい。
そのうえで、誠実で、かつ、ピュアな音楽が奏で上げられています。そのような演奏ぶりを通じて、モーツァルトの音楽が持つ愉悦感や飛翔感が、巧まずして描き出されてゆく。そう、決して大袈裟なやりかたではなく、頗る自然な形で描き出されている。
ブリュッヘンの豊かな音楽性と人間性が滲み出ていると言えそうな、なんとも素敵なモーツァルト演奏であります。