アラウ&クーベリック&バイエルン放送響によるブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴いて
アラウ&クーベリック&バイエルン放送響によるブラームスのピアノ協奏曲第1番(1964年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
実に勇壮な演奏であります。気宇が大きく、堂々としていて、逞しい生命力に貫かれている音楽が奏で上げられている。音楽全体が、豊かに息づいている。
アラウもクーベリックも、決して「熱演型」の演奏家ではないと言えましょう。どちらかと言えば、誠実さを全面的に出しながら、知性の優った演奏を聞かせてくれることの多い演奏家だと思っています。そのような2人が、ここでは、白熱の演奏を展開してくれている。それは、ライヴゆえのことでもありましょう。そう、クーベリックはよく、ライヴでは熱く燃え上がった演奏を展開してくれていました。そのようなクーベリックの姿が、この音盤にはシッカリと刻まれている。
と言いつつも、決して羽目を外した演奏になっている訳ではありません。この2人ならではの誠実な演奏となっている。暖かみが感じられる。風格豊かでもある。そのうえで、覇気に満ちた演奏が繰り広げられているのであります。激情的でもある。
その一方で、緩徐楽章では、瞑想的とも言えそうな演奏が繰り広げられています。滋味深くもある。深い呼吸に支えられている演奏、とも表現したくなる。
総じて、アラウのタッチは、強靭さが感じられつつも、柔らかくもある。そして、壮宏で、貫禄タップリな演奏ぶりが示されている。そのようなアラウを受けて、クーベリックが奏でる音楽は、真摯で堅実で、かつ、雄渾を極めている。
そのような演奏ぶりによって、まだ20代の前半だったブラームスが書き上げたこの協奏曲の、バイタリティに溢れていて、かつ、ロマンティックな感興に包まれている音楽世界が、クッキリと描き出されてゆく。
いやはや、なんとも見事な、そして、実に素敵な演奏であります。