オーマンディ&フィラデルフィア管によるアイヴズの交響曲第2番を聴いて
オーマンディ&フィラデルフィア管によるアイヴズの交響曲第2番(1973年録音)を聴いてみました。
アイヴズ(1874-1954)は、保険業を本業とした、アメリカ生まれの「日曜作曲家」。とは言え、正規の音楽教育を受けており、交響曲を4曲生み出すなど、積極的な作曲活動を行っています。ガーシュイン、コープランドなどとともに、アメリカ生まれの作曲家の中でも、演奏される頻度は高いと言えましょう。
(イェール大学に4年間在学して音楽を学んだのですが、卒業後「不協和音のため飢えるのはまっぴらだ」と言って、生命保険会社に入社したようです。)
その作風の特徴としては、アメリカの民族音楽を取り入れるなどして、調性や旋律を明確に持った、親しみやすい作品が多いことが挙げられましょう。また、讃美歌にベースを置くような音楽づくりを示すことによって、敬虔な音楽世界を描き上げもする。
その一方で、次第に前衛的な作風を示すようになり、音と音とのぶつかり合いを強調したり、不穏な雰囲気を醸し出したり、といった音楽を生み出すようになりました。そのために、明快で敬虔でありつつ、不穏でもある、といった要素が混淆した音楽を書くようにもなった。そのような性格は、交響曲第4番(40代前後に書かれた作品)においてよく示されているように思えます。
この交響曲第2番は、5つの楽章から成っている、アイヴズが20代のときに書き上げられた作品。演奏時間は、40分ほどになります。
調性の明確な音楽で、数多くのアメリカ民謡などが引用されている。最終楽章にはフォスター(1826-1864)作曲の≪草競馬≫のメロディが頻繁に顔を出したりもして、勢いのある音楽となっています。
全編を通じて、明朗な音楽世界が広がっていつつも、シリアスな雰囲気を湛えてもいます。
さて、この演奏を聴いての印象について。
オーケストラを高らかに鳴らしながら、華麗な音楽に仕上げています。最終楽章などは、とりわけ豊麗な演奏が繰り広げられている。とても恰幅が良い。適度な力感が備わってもいる。そして、オケの響きの煌びやかさが、なんとも心地よい。
それでいて、決して浮ついた音楽にはなっておらず、この作品が持っている真摯な性格も、シッカリと描き出されています。晴れやかでありつつ、潤いのある演奏ぶりが示されている。肌触りは滑らか。音楽がタップリと鳴り響いてもいる。抒情的な味わいを湛えている第3楽章(緩徐楽章)では、艶やかな音楽が奏で上げられている。
そんなこんなも含めて、明快にして風格豊かな恰幅の良い演奏となっています。オーマンディ&フィラデルフィア管ならではの、華麗かつメロウな音楽づくりを堪能できる演奏だとも言えそう。そのうえで、この作品の魅力を存分に味わうことができる。
なんとも素敵な作品であり、魅力的な演奏であります。