ハーン&ジンマン&ボルティモア響によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴いて
ハーン&ジンマン&ボルティモア響によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(1998年録音)を聴いてみました。
図書館で借りてきたCDでの鑑賞になります。
1996年に、17歳でバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番とパルティータの第2,3番を録音してレコーディングデビューを飾ったハーン。当盤は、その2年後に録音されたもので、彼女にとって初めての協奏曲作品の録音となります。
さて、ここでのハーンによるヴァイオリン演奏はと言いますと、クールで、冴え冴えとしたものとなっています。透徹された音楽が奏で上げられている。
総じて、知的な演奏であると言えましょう。
全編を通じて、弾き飛ばすようなところは全く見受けられずに、緻密な音楽づくりが為されています。磨き上げが丁寧でもある。そのようなこともあって、凛とした美しさを湛えている。キリッとした表情をした音楽となってもいる。そして、端正な佇まいを示している演奏が繰り広げられている。
しかも、奏で上げられている音楽からは硬さが全く感じられません。実に伸び伸びとしている。瑞々しくて、清々しくもある。
更には、繊細で、感受性の豊かな演奏ぶりだとも言いたくなります。情感豊かでもある。とりわけ第2楽章では、切々と歌い上げられていて、胸に深く染み入ってくる音楽が鳴り響いている。
それでいて、最終楽章において顕著なように、機敏で、躍動感に溢れていて、目の覚めるような鮮やかさを持った演奏となってもいる。
そのようなハーンに対して、ジンマンは、恰幅が良くて、かつ、メリハリの効いた演奏ぶりで応えてくれていて、こちらもまた聴き応え十分。
なんとも魅力的な演奏であります。
なお、カップリングはバーンスタインの≪セレナード≫という、とても珍しい組合せ。
こちらでは、ベートーヴェンでの演奏にも増して、ハーンのテクニカルな冴えを鮮明に感じ取ることができます。
とてもアグレッシブな音楽が奏で上げられていて、鋭敏で、敏捷性が高くて、音楽が嬉々として飛び跳ねているかのよう。しかも、第4楽章では頗る厳粛な音楽が鳴り響いている。
これらのことは、ジンマンについても当てはまる。
胸のすくような快演。そのような言い方がピッタリだと思えます。