コリン・デイヴィス&シュターツカペレ・ドレスデンによるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫を聴いて
コリン・デイヴィス&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫(1997年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
実に見事な、そしてチャーミングな演奏が繰り広げられています。
決して派手ではなく、むしろ渋めな演奏だと言えそうなのですが、それでいて必要十分な華やかさを備えてもいる。肌触りが柔らかくて、しなやかで、優美でもある。この辺りは、メンデルスゾーンの音楽に誠に似つかわしい。
それでいて、逞しさを宿した音楽が響き渡っています。決して押しつけがましい演奏ではなく、いわんや、威圧的な演奏などでは毛頭ないのですが、ムクムクと湧き立つような力強さが感じられる。推進力に満ちてもいる。そのような性格は、第1楽章において顕著だと言えましょう。
更に言えば、第3楽章では、抒情性に満ちていて、かつ、壮麗で、気宇の大きな音楽が奏で上げられていて、コクの深さが感じられる。また、最終楽章でも力感に溢れた演奏が繰り広げられている。そのうえで、エンディングでの昂揚感も、実に見事。しかも、格調の高い昂揚感といったものが築かれている。
そして、これは全般を通じて言えることなのですが、凛とした優しさに溢れてもいる。毅然としてもいる。
このような演奏を可能としているのは、SKDに依るところも大きいと言えましょう。このオーケストラならではの、清潔感が漂っていて、キリリと引き締まっていて凝縮度が高くて、そのうえで凛とした佇まいをしている美音を、この演奏でもタップリと提供してくれている。
多彩な魅力を備えていて、奥行きの深さの感じられる演奏。しかも、生命力に溢れてもいる。
C・デイヴィス&SKDの美質と、メンデルスゾーンの音楽の魅力とが相乗効果をもたらしてくれている、なんとも素敵な演奏であります。