アンチェル&チェコ・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第10番を聴いて

アンチェル&チェコ・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第10番(1955年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

アンチェル&チェコ・フィルのコンビがドイツ・グラモフォンに録音するのは非常に珍しいことですが、このコンビが1955年にドイツツアーを行った際に、ミュンヘンでセッション録音されたもののようです。
さて、ここでの演奏はと言いますと、逞しい生命力に溢れていて、緊張感に満ちたものとなっています。
筆致が骨太であり、雄渾な演奏が繰り広げられている。しかも、キリっとした表情をしていて、決然とした音楽が鳴り響いている。そのうえで、第2楽章での疾駆感などには、凄まじいものがある。この楽章に限らず、スリリングにして、緊張感の高い演奏が展開されている。
ある種、客観的な演奏だとも言えましょう。変に感情移入をせずに、純音楽的な佇まいを描き出そうという意図の感じられる演奏が展開されています。しかも、真摯な演奏態度が貫かれている。それ故に、ショスタコーヴィチが描いたシリアスな音楽世界が、より一層の現実味を帯びたものとして響き渡っているように思える。
そのうえで、頗る力強い演奏となっています。音楽が、至る所で渦巻いている。

聴き手をグイグイと引っ張ってゆく力の大きな、実に立派で見事な、そして、頗る魅力的な演奏であります。