カラヤン&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンの≪宗教改革≫を聴いて

カラヤン&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンの交響曲全集から≪宗教改革≫(1971年録音)を聴いてみました。

カラヤンの演奏には、溌剌かつ颯爽としたものと、重量感たっぷりなものとがあると思うのですが、ここでは後者のカラヤンを聴くことができます。重心を低く採りながら、安定感のあるどっしりとした構えの演奏が展開されている。
伸びやかで、晴れやかな音楽というよりも、むしろ、どんよりとしている、或いは暗鬱としている、と言っても良いような音楽が奏でられています。足取りが重くもある。メンデルスゾーンの音楽が持っている明朗さや爽快感は、かなり薄いと言えましょう。
なるほど、カラヤンらしい滑らかな仕上がりになっています。しかしながら、それが流麗さや華々しさに繋がっていない。最終楽章では、多少なりとも輝かしさや壮麗さが感じられますが、決してはしゃぎたてるような音楽となっている訳ではなく、全編を通じて深刻さが前面に出ている演奏ぶりだと言えそう。
≪宗教改革≫は、メンデルスゾーンの作品の中でも、かなりシリアスな音楽であると言えましょう。骨格の太い音楽だとも言えそう。起伏が激しく、激情的でもある。ある種、粘着質でもある。そのような性格を、じっくりと描き上げてくれている演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。

もう少し開放感のある演奏ぶりであっても良かったのではないだろうか。そのような思いも湧き起こりはしますが、充実感いっぱいの、聴き応えのある興味深いメンデルスゾーン演奏だと思います。