デ・ワールト&シュターツカペレ・ドレスデンによるモーツァルトのセレナード第5番を聴いて

エド・デ・ワールト&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるモーツァルトのセレナード第5番K.204を入場用の行進曲K.215付で聴いてみました(1973,74年録音)。
デ・ワールトとSKDのコンビは、1970年代の中頃にモーツァルトのセレナードを4曲録音しており、当盤はその中の1枚。
このセレナードは、あまりメジャーな方ではないと言えそうですが、セレナードというジャンルならではの華やかさと、晴れやかな明澄さに包まれた佳品であると言えましょう。1775年、モーツァルトが19歳だったザルツブルク時代に書かれた作品で、大学の学年末の祝賀夜会のフィナーレを飾って演奏されたのだとか。セレナード部分は7つの楽章で構成されていて、第2,3,4楽章はヴァイオリンの独奏を伴っています。(この音盤ではウト・ウギが担っています。)
約3分間の行進曲のあと、約40分間のセレナード部分が続きます。
この音盤の最大のポイントは、何と言いましてもSKDにあると言いたい。このオケならではの、清潔感に溢れ、気品に満ちた響きと、シルクを思わせる光沢と肌触りに触れることのできる、誠に魅力的な音楽が鳴り響いているのであります。
そのようなSKDに対して、デ・ワールトの音楽づくりがまた、清新で、堅実でありながら適度に溌剌としたものになっている。精彩豊かでもある。なおかつ、キリリと引き締まっていつつ、弾力性を帯びてもいて、生命力に溢れている。愉悦感も十分。
作品の魅力と、ここでの演奏の味わいとが相まって、心の底からの幸福感を噛み締めることのできる、素敵な素敵な音盤であります。





