上原彩子さん&デ・ブルゴス&ロンドン響によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴いて

上原彩子さん&デ・ブルゴス&ロンドン響によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(2005年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
上原さんの実演を初めて聴いたのは、2012年9月。小林研一郎さん&東京フィルによる、東京の春日シビックセンターで開催されていた「響きの森」シリーズでのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番でありました。
当初は、ユンディ・リが独奏を務めることになっていたのですが、東日本大震災での原発事故による放射能問題で、中国政府がユンディの日本行きの許可を出さずに(震災から1年半が経過していたにも拘らず!!)、来日できなくなり、その代役で上原さんが出演したのでした。チケット代の半分くらいが戻ってきて、「この分が、ユンディと上原さんとのギャラの差額なのか!!」とビックリしたものでした。
しかも、上原さんのダイナミックで、かつ、感興豊かな演奏ぶりに、再度ビックリ。チケット代の半分が返ってきた上に、こんなにも素晴らしい演奏に出会えたとは、なんとラッキーなことなのだろうと、ほくそ笑んだものでした。
当盤は、上原さんが2002年のチャイコフスキー・コンクールで第1位を獲得した3年後に録音されたもので、CDデビュー盤になります。その演奏はと言いますと、2012年に実演で聴いた演奏内容を思い出させてくれるものになっている。
逞しさと、繊細さを併せ持っている演奏が繰り広げられています。強靭なタッチを繰り出しながら、決して粗暴な演奏にはなっていない。そう、情感豊かで、ニュンス豊かな演奏ぶりが示されている。端正でいて、熱くもある。
遅めのテンポを基調としながら、丹念に音楽を奏で上げています。弾き飛ばすようなところは皆無。しかも、流れが頗るスムーズ。息遣いが自然で、かつ、豊かでもある。
更に言えば、常に遅いテンポを採っている訳ではなく、必要に応じて音楽を存分に煽っています。キビキビと音楽を進めてゆくこともしばしば。とても機敏でもある。そのような箇所では、粒立ちの鮮やかさが際立つこととなっている。
その一方で、曲想によっては、哀感タップリに奏でてゆく。そのことによって、とてもデリケートで、かつ、聴く者の胸にジッと染み入ってくるような音楽が鳴り響くこととなっています。上原さんの感受性の豊かさが窺える演奏になっているとも言いたい。
そんなこんなによって、とても起伏の大きな演奏が展開されています。チャイコフスキーの作品に相応しいロマンティシズムを湛えることとなってもいる。
そのような上原さんをバックアップしているデ・ブルゴスがまた、雄大にして、鋭敏で、必要に応じては頗る感傷的な演奏を繰り広げてくれながら、ピアノ独奏をシッカリとサポートしてくれている。
上原さんの魅力が、ギッシリと詰まっている演奏。そして、聴き応え十分な演奏。
多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素敵な素敵な演奏であります。





