ライナー&シカゴ響によるウィンナ・ワルツ集を聴いて

ライナー&シカゴ響によるシュトラウス・ワルツ集(1957,60年録音)を聴いてみました。収められているのは、下記の6曲。
≪美しく青きドナウ≫(ヨハンⅡ世作)
≪オーストリアの村つばめ≫(ヨーゼフ作)
≪皇帝円舞曲≫(ヨハンⅡ世作)
≪ウィーンかたぎ≫(ヨハンⅡ世作)
≪芸術家の生涯≫(ヨハンⅡ世作)
≪南国のばら≫(ヨハンⅡ世作)

ライナーの演奏の特徴、それは、切れ味の鋭い音楽づくりになると言えましょう。そのうえで、豪快で強靭で、「男気に溢れている」と言えそうな演奏を繰り広げることが多い。
そんなライナーによるウィンナ音楽集でありますが、20世紀を代表する名ソプラノ歌手の一人でありますシュワルツコップが、「無人島に持って行く1枚」として選んだことで、注目を集めた音盤でもあります。
ライナーは、1888年にハンガリーで生まれています。当時のハンガリーは、オーストリア=ハンガリー帝国(1918年に崩壊)として、ハプスブルク家が統治していた地域になります。ライナーが生まれたときには、親ハンガリーとしても愛されていた皇后エリザベート(愛称:シシー)は、存命でありました。そのようなこともあって、ライナーにとっては、ウィーンの音楽は、とても身近なものであったと言えるのかもしれません。
さて、ここでのライナーによるシュトラウス・ワルツ集はと言いますと。

率直に申しますと、ウィーン情緒を前面に押し出したものとは一線を画している演奏だと思います。とろけるような甘さを持っている音楽というよりも、もっと毅然とした態度で音楽を奏で上げている。
と言いつつも、音楽は存分に弾んでいる。普段のライナーによる演奏ぶりとは異なり、ふくよかさの感じられる音楽づくりが採られてもいる。愉悦感にも不足はない。
そのうえで、とても味わい深い演奏となっています。しかも、いかにもライナーらしいと言えるやり方を取りながら。すなわち、ウィーンのローカル色を極力排しながら、もっと普遍的な音楽として、これらの作品を奏で上げている。そのために、とても凛とした音楽世界が出現している。純粋な音楽美に溢れてもいる。

なんとも奥深い、素敵な演奏ウィンナ・ワルツ集であります。