バルシャイ&モスクワ室内管によるバルトークの≪弦楽のためにディヴェルティメント≫を聴いてみました

バルシャイ&モスクワ室内管によるバルトークの≪弦楽のためのディヴェルティメント≫(1962年録音)を聴いてみました。

バルシャイ(1924-2010)は、旧ソ連に生まれた指揮者。当初はヴィオラを弾いていましが、後に、指揮者に転向しています。1969年にショスタコーヴィチの交響曲第14番≪死者の歌≫を初演したのはバルシャイ。その後、1976年にスイスへ亡命し、以降は、西側で活動をしています。
そんなバルシャイの演奏の特徴、それは、精緻で鋭利な音楽づくりを基盤としながら、客観性の高いものに仕上げてゆくところにあるように思えます。
ところで、バルシャイによる音盤で最も広く親しまれているのは、ケルン放送響とのショスタコーヴィチの交響曲全集なのではないでしょうか。この全集は1992年から2000年にかけての制作でありましたが、早くから廉価盤で販売されていましたので、購入がしやすかったということもあって、よく売れていたようです。

さて、ここでのバルトークを聴いての印象であります。
バルシャイらしい、精緻な演奏が展開されています。更に言えば、贅肉が削ぎ落とされていて、スマートでシャープな音楽となっている。そして、頗る緊張感が高い。そのような演奏ぶりが、この作品に相応しい。
そのうえで、埃が全く付いていない、純美な佇まいをした音楽になっています。音楽はキビキビと進められていて、整然とした演奏が繰り広げられている。しかも、充分なる推進力を備えていて、力感に溢れている。そう、なんとも逞しい生命力を備えた音楽となっている。醒めているようでいて、とてもホットな演奏だとも言えそう。

ショスタコーヴィチの全集以外は、なかなか話題に上らないバルシャイだと言えそうですが、このバルトークは、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい素敵な演奏であります。