フィードラー&ボストン・ポップスによる≪パリの喜び≫を聴いて

アーサー・フィードラー&ボストン・ポップス・オーケストラによるオッフェンバックの≪パリの喜び≫(1954年録音)を聴いてみました。

フィードラー(1894-1979)は、1915年にボストン響にヴァイオリニストとして入団していますが、ピアニスト・オルガニスト・打楽器奏者なども務めていたようです。1924年にはボストン響のメンバーによる室内楽団ボストン・シンフォニエッタを立ち上げ、無料の野外コンサートを始めるようになり、1930年にはボストン・ポップス・オーケストラの第18代指揮者に就任し、半世紀にわたってその職を務めています。
ボストン・ポップス・オーケストラはボストン響が夏のオフシーズンの間、音楽普及を目的としたポピュラーコンサートや音楽会で演奏するために編成を変えたもので、基本的なメンバーはボストン交響楽団と同じ。基本編成は96名と大規模であり、その時々に応じて人気のある曲や往年のスタンダードナンバーを演奏し、ポップス・オーケストラとして確固たる地位を築いています。
ボストン・ポップス・オーケストラの歴史は古く、設立は1885年に遡る(以上、Wikipediaより抜粋)とのこと。
フィードラーの後を引き継いで常任指揮者に就いたのが、≪スター・ウォーズ≫で有名なジョン・ウィリアムスになります。
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オッフェンバックによる≪パリの喜び≫についても、少々、説明を。
この作品は、オッフェンバックが作曲した音楽をフランスの指揮者ロザンタールが自由に選びながらバレエ音楽として編曲したもの。そこには、オッフェンバックの作品として最も有名と言える≪天国と地獄≫(原題は≪地獄のオルフェ≫)のカンカンの旋律が採り入れられていたり、≪ホフマン物語≫のワルツや舟歌の旋律が出てきたりします。そして、一部には、ロザンタールが作曲した箇所があったりもします。
全体を通じて、とても親しみやすく、陽気でお洒落な音楽になっていると言えましょう。

さて、そのようなフィードラー&ボストン・ポップスによる≪パリの喜び≫であります。
いやはや、実に楽しい演奏であります。聴いていて、気持ちがウキウキとしてきます。難しいことを考えずに、この素敵なバレエ音楽の音楽世界に身を浸すことができる。
そのうえで、あっけらかんとしていて、底抜けに明るい。カラッとしていて、湿り気といったものが微塵も感じられません。テンポは概して速めで、音楽が颯爽と駆け抜けてゆくかのよう。
そして、何ともオシャレ。音楽の聞かせ方や、団員の技術は、巧いこと極まりない。
これらのことは、フィードラー&ボストン・ポップスの真骨頂が発揮されているがゆえのことであると言えましょう。
そのような中で、ロザンタール作となる第13曲の「決闘」のシーンや、第15曲の「カンカンへの序奏」では、実にドラマティックな演奏が展開されていて、大きなアクセントとなっている。ここに、ただ単に気軽に音楽を聴いてもらおうという姿勢だけではない、フィードラーの表現意欲の旺盛さを感じ取ることができるのであります。

それにしまして、聴後の気分は誠に爽快。
なんとも素敵な作品であり、見事な演奏であります。