クレンペラー&フィルハーモニア管によるストラヴィンスキーの≪プルチネルラ≫組曲を聴いて

クレンペラー&フィルハーモニア管によるストラヴィンスキーの≪プルチネルラ≫組曲(1963年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

クレンペラーと言えば、ドイツ音楽の、しかも古典派からロマン派の作曲家の権威、といったイメージが先行するかもしれませんが、今年の5月に採り上げたワイルの≪三文オペラ≫でも書きましたように、1950年頃までのクレンペラーはザッハリッヒカイトな演奏スタイルを前面に押し出していて、現代音楽も得意としていた指揮者でありました。その演奏スタイルは、晩年の多くの演奏でのように超スローなテンポを採りながら雄大かつ濃厚な音楽を奏で上げてゆくといったものとは別人であるかのように、快速なテンポを採りながらスッキリとした演奏を繰り広げることが多い、というものだった。
この≪プルチネルラ≫は1960年代に入ってからの録音になりますが、1950年代辺りまでのクレンペラーの演奏スタイルを垣間見ることのできる演奏になっていると言えそうです。
テンポは必ずしも快速だとは言い切れないまでも、快活で開放感のある演奏が繰り広げられている。歯切れが良くて、隈取りが鮮やかである。音の粒がクッキリとしてもいる。そして、愉悦感に溢れている。
これもまた、クレンペラーの偽らざる一面。
しかも、この擬古典主義のバレエ音楽に相応しい優美さを湛えた演奏となっている。

そのようなクレンペラーの姿を、ステレオ録音で確認することのできる、ここでの≪プルチネルラ≫。
なんとも貴重な記録であります。