ロト&レ・シエクルによるベルリオーズの≪幻想≫を聴いて
ロト&レ・シエクルによるベルリオーズの≪幻想≫(2019年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
清新な演奏が展開されています。
ドロドロとしたり、粘ったり、厚化粧が施されたリ、といったことは皆無。溌剌としていて、スッキリとした音楽が鳴り響いています。機敏にして、躍動感に溢れてもいる。
全体を通じて、適度にエッジの立っている演奏となっています。そのうえで、小気味良くて、音楽が弾んでいる。音の粒がクッキリとしている。音楽全体がスリムで引き締まっている。リズムは明快に刻まれてゆく。明晰にして晴朗な演奏だとも言いたい。ピリオド楽器が使用されていることによるピュアな響きも、このような印象を強めてくれていると言えそう。
しかも、スッキリとしていつつも薄味ではない。なるほど、キリっと引き締まっていて、音楽が豊満になるようなことは一切ないのですが、生命力豊かな音楽となっています。生彩感に溢れてもいる。そう、ケバケバしさはないものの、音楽が清潔感を持って若々しく躍動している分、彩り鮮やかな音楽が鳴り響いている。
更に言えば、音楽が見せてくれている表情は、とても親しみやすいと言いたい。気取ったところが全くなく、聴き手に優しく微笑みかけてくるよう。しかも、表情が実に生き生きとしている。それゆえにと言えましょうか、愉悦感たっぷりな演奏となっている。
それでいて、力強さにも不足はない。必要十分にドラマティックな演奏となっています。過剰に派手に盛り上げるといったことはしていないものの、クライマックスでの昂揚感も十分。最後の最後で、アッチェレランドを掛けながら音楽を煽ってゆくのは、それまでの演奏ぶりから解き放たれたような感覚に捕らわれて、なかなかに印象的でもある。
ロトの音楽性の豊かさがハッキリと窺える演奏。
なんとも素敵な、そして、見事な演奏であります。