ミトロプーロス&ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第5番を聴いて

ミトロプーロス&ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第5番(1954年録音)を聴いてみました。

ミトロプーロスの演奏の特徴、それは、緻密で明晰な音楽づくりを土台にしながらも、生命力や推進力に溢れた激情的な演奏を繰り広げるところにあると言えましょう。知的でありつつも、熱く燃え滾るような音楽を提示してゆくことが多い。そんなこんなによって、知情のバランスが絶妙な指揮者であると、私は考えています。
そのうえで、エッジが立っていて、キレッキレな演奏が展開されてゆく。畳みかけながら音楽を押し進めてゆくようなこともしばしば。
さて、ここでの演奏ですが、そのような特徴がよく現れているものとなっているように思えます。

まずもって、アンサンブルが緻密で精緻を極めている。更に言えば、オーケストラ全体が大きな意志を持っていて、束になって襲い掛かって来るかのよう。襲い掛かるとは穏やかな表現ではないが、聴くものを圧倒し、そして満足感で満たしてくれる。そんなふうに言える演奏となっているように思えます。そして、ここで触れた意志とは、ミトロプーロスによって与えられたものに他ならないのでありますが。
更に言えば、アゴーギクの掛け方も見事。基本的には、速めのテンポでグイグイと押し進められているのですが、ごく自然な形で音楽が伸縮している。そのために、音楽が豊かに息づいている。全ての表現が実に音楽的で、説得力に溢れている。
そのようなこともあり、力感に溢れていて、逞しい生命力に貫かれた演奏でありつつも、ただ単に力で押し切ってゆくだけではない、奥行き感のようなものが感じられる演奏となっています。
そして、エンディングでは大きな昂揚感が築かれていて、このスリリングにしてドラマティックでエネルギッシュな演奏に相応しい形で閉じられてゆく。

いやはや、何もかもが圧倒的な演奏。
これはもう、途轍もなく素晴らしい演奏であると思います。