ブレンデル&マリナー&アカデミー室内管によるモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を聴いて

ブレンデル&マリナー&アカデミー室内管によるモーツァルトのピアノ協奏曲第21番(1981年録音)を聴いてみました。

なんとも端正な演奏であります。
まずもって、ブレンデルの音の何と美しいこと。粒が揃っていて、ふくよかで、そして、まろやかで柔らかくて暖かい。まるで真珠のような、純美で清らかな色彩を放っているとも言いたい。
そのような音によって奏でられてゆく音楽は、どこまでも伸びやかで、しなやかで、滑らか。そのうえで、理知的でもあるのですが、息遣いは誠に自然。珠をコロコロと転がすような風情が感じられもします。
ブレンデルをサポートしているマリナーがまた、溌剌としていて、かつ、清々しい音楽を奏で上げてゆく。
そんな演奏ぶりの先には、モーツァルトならではの愉悦感や飛翔感が広がり、優美な音楽世界が現れることとなっている。音楽自体が必要以上にはしゃいでいる訳ではないのですが、充分に弾けています。シッカリと理性が働いていつつも、無邪気でもある。そして、無垢な美しさに溢れている。

ピュアで、チャーミングな演奏。そのような演奏ぶりが、モーツァルトのピアノ協奏曲に、誠に相応しい。そして、聴いていて幸福感に包まれてくる。
安心してモーツァルトのピアノ協奏曲の世界にドップリと浸ることのできる、素敵な素敵な演奏であります。