ハイティンク&コンセルトヘボウ管によるビゼーの交響曲を聴いて
ハイティンク&コンセルトヘボウ管によるビゼーの交響曲(1977年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
ハイティンクらしい、堅実にして端正な演奏となっています。
この作品が備えている、ウキウキとして無邪気に飛び跳ねるような弾力性を帯びた音楽になっているかと言えば、そうではない。それよりももっと、どっしりと構えた、大人びた演奏となっています。澄み切った青空が広がっているというよりも、翳の濃い音楽が響き渡っているとも言えそう。
じっくりと腰を落ち着けて、ここで描き出されている音楽世界に身を置きながら聴き進めてゆく。そのような演奏となっています。それだけに、第2楽章での哀愁に満ちた音楽が、より一層心に沁みてくる。
そのようなハイティンクによる音楽づくりに対して、ここでもコンセルトヘボウ管は、奥深さを湛えていて落ち着きがあり、芳醇な香りが立ち込めてくるような響きで作品を染め上げてくれています。しかも、アンサンブルが緊密で、粒立ちが鮮やかで、音楽が立体的に立ち上がってくるかのよう。第2楽章でのオーボエのソロからは、風雅な趣きが強く感じられる。
なんともユニークな魅力を湛えている演奏であります。それは、幽玄の世界に遊ぶかのようなビゼー演奏だと言いたい。或いは、含蓄のあるビゼー演奏だとも言えましょうか。
なんとも味わい深い演奏であります。