スピヴァコフ&小澤さん&フィルハーモニア管によるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いて
スピヴァコフ&小澤さん&フィルハーモニア管によるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(1981年録音)を聴いてみました。
スピヴァコフによるヴァイオリンは、艶やかでいて、キリっとしていて凛々しくて、とても清冽なもの。響きがとても美しい。しかも、響きも音楽づくりも、実に端正であります。気品に満ちているとも言えそう。
そのようなこともあり、この曲につきまとうイメージであります「土臭さ」(この作品の初演を聴いたドイツの高名かつ毒舌で知られる音楽評論家ハンスリックは、「音楽作品にも聴くと臭いを発するものがありうるという恐ろしい考えを、初めて我々に起こさせた」と評している)が全く感じられない。
それでいて、充分に力強くもある。覇気が漲ってもいる。しかも、全く気負うところがなく、自然な力強さが表されている。緩徐楽章では、豊かな抒情性を湛えてもいる。
しかも、シッカリとした技巧に支えられていて、安定感が抜群。そのことがまた、音楽の佇まいの美しさに繋がってきている。
聴いていてウットリとしてくる、水も漏らさぬほどに見事な、そして、魅惑的なヴァイオリン独奏であります。
そのようなスピヴァコフに対して、小澤さんの指揮がまた、端正にして雄弁なもの。純音楽的な美しさに満ちていると言えましょう。
なかなか話題に上らない演奏であると思いますが、その素晴らしさは、驚嘆もの。
多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素敵な素敵な演奏であります。